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「薬でも手術でもない」第三の脊椎治療SCS(脊髄刺激療法)とは

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‐SCSの最前線。トップランナーの専門医に訊く、その可能性と未来 ‐

高齢化の進行に伴い、腰痛や足のしびれ、脊椎疾患による慢性的な症状に悩む患者は増加しています。これらの症状に対する治療法としては、薬物療法や手術療法が一般的です。

一方で、持病や年齢を理由に手術を受けることが難しい方や、手術後も痛みやしびれが残っている方、手術そのものに不安を感じる方など、治療の選択に悩む患者も少なくありません。 

こうした患者に対する新たな選択肢として、近年、注目されているのが脊髄刺激療法(Spinal Cord Stimulation :SCS)です。

SCSとは、脊髄に微弱な電気を流すことで難治性の痛みを緩和する外科的な治療方法のひとつです。従来の保存療法や手術療法とは異なる「第三の脊椎治療」として、慢性的な痛みやしびれに悩む患者のQOL(生活の質)向上に貢献することが期待されています。 

このたび、数年前よりSCSに積極的に取り組んできており、全国の医師への技術指導も行っている世田谷人工関節・脊椎クリニック副院長の大友望先生に、SCSがもたらす新たな可能性についてお話を伺いました。

Q1. なぜ今、SCSが「第三の治療法」として改めて注目されているのでしょうか? 

SCS自体は、日本でも以前から実施されてきました。しかし当時は治療技術やデバイスが現在ほど進歩しておらず、適応となる患者さんや治療効果に対する理解も十分に広がっていたとは言えませんでした。

しかし近年では、デバイス性能や刺激プログラムが大きく進化し、患者さん一人ひとりの症状に合わせた治療が可能になっています。

また、本格的な治療前に、効果を測る「トライアル」を実施できる点も重要です。患者さん自身が事前に効果を体感し、納得したうえで治療を選択でき、万が一合わなければ元の状態に戻すことも可能な「可逆性」を備えている点は、患部の構造を直接修復する従来の脊椎手術にはない、SCSならではの唯一無二の特徴と言えます。

Q2. 具体的にどのようなメカニズムで痛みが和らぐのですか? 

SCSは脊髄に微弱な電気刺激を与えることで、痛みの原因となる神経の過剰な興奮を抑え、脳へ伝わる痛みの信号をコントロールします。

痛みそのものを取り除くというより、痛みを感じにくくすることで症状の軽減を目指す治療です。

骨を大きく削ったり、神経に直接触れたりするわけではないため、従来の脊椎手術に対して「怖い」というイメージをお持ちの患者さんでも、比較的安心して治療に臨めるかと思います。

Q3. SCSは、具体的にどのような症状を持つ患者さんに適しているのでしょうか? 

SCSは、薬物療法だけでは症状の改善が難しいものの、年齢や持病などを理由に手術を選択できない方、あるいは脊椎手術を受けた後も痛みやしびれが残り、日常生活に支障を感じている方に適した治療法です。従来、脊椎治療は「保存療法」か、もしくは「除圧術や固定術といった手術療法」か、という選択が中心でしたが、SCSはそのどちらとも異なる、新たな治療の選択肢として期待されています。

薬だけでは改善が難しい一方で、手術に踏み切れない患者さんから、手術を受けたものの腰痛や下肢のしびれが治らない患者さんまで、幅広く症状改善を目指せる適応の広さが特徴です。

Q4. SCSを受けた患者さんは、実際にどのような変化を実感されていますか? 

痛みをゼロにすることは現代の医療ではなかなか難しく、SCSも痛みを完全になくすことを目的とした治療ではありません。一般的には、痛みが半分程度まで軽減すれば治療効果が得られていると考えられています。

「半分か...」と思われるかもしれませんが、慢性的な痛みに悩む患者さんにとって、その変化は決して小さなものではありません。痛みが和らぐことで散歩や買い物、旅行などを再び楽しめるようになったり、ご家族との時間を前向きに過ごせるようになったりする方もいらっしゃいます。

私たちが目指しているのは、単に痛みの数値を下げることではなく、患者さんが自分らしい生活を取り戻すことです。実際に当クリニックでSCSを受けられた患者さんの中でも、QOL(生活の質)の向上を実感される方は非常に多いと感じています。

Q5. 最後に、慢性的な痛みやしびれに苦しんでいる患者さんへメッセージをお願いします。

慢性的な痛みやしびれを抱えている方の中には、「年齢のせいだから仕方ない」「もう治らない」と諦めてしまっている方も少なくありません。 しかし、「もう一生この痛みと付き合うしかない」と絶望していた方が、SCSによって諦めていた日常を取り戻す姿を、私は数多く見てきました。もちろん、すべての症状にSCSが適応となるわけではありませんが、近年は治療技術の進歩によって、これまで十分な治療法がなかった患者さんにも新たな選択肢が生まれていることを一人でも多くの方に知っていただきたいと思っています。

痛みを抱えたまま我慢し続けるのではなく、ぜひ一度専門医にご相談ください。ご自身に合った治療法が見つかることで、日常生活や趣味、仕事などを再び前向きに楽しめるようになるかもしれません。私たちは、患者さんが自分らしい生活を取り戻せるよう、責任をもって次の一手を提示して、最後までサポートしていきたいと考えています。

■大友 望(おおとも・のぞむ)先生 プロフィール

■略歴

2011年3月 群馬大学 医学部医学科卒業
2011年4月 関東労災病院(研修医)に就職
2013年4月 関東労災病院 整形外科・脊椎外科
      /スポーツ整形外科勤務
2013年10月 東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科
      (専修医)勤務
2014年5月 関東労災病院 整形外科・脊椎外科
      /スポーツ整形外科勤務
2015年4月 横浜労災病院 整形外科・脊椎脊髄外科勤務
2017年4月 日本赤十字社医療センター 脊椎整形外科勤務
2018年10月 三楽病院 整形外科/脊椎脊髄センター (医長)勤務
2020年4月 東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科
      (助教)勤務
2024年4月 世田谷玉川整形外科内科クリニック
      脊椎脊髄センター(センター長) 勤務
2026年4月 世田谷人工関節・脊椎クリニック 副院長就任

専門医・指導医・認定医・所属学会

日本整形外科学会 整形外科専門医
日本整形外科学会 脊椎脊髄病認定医
日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄外科専門医
日本脊椎脊髄病学会 モニタリング認定医
日本整形外科学会
日本脊椎脊髄病学会
日本脊椎・脊髄神経手術手技学会

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